浄瑠璃本蔵書目録(一)

序 あいさつ


 松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館は、その名の示す通り、一つの施設の中で二つの主題をもって博物館活動を行っている。一つは、松茂町500年の歴史を「水とたたかう松茂の人々」という視点から跡づけているのであり、他の一つは、「民衆に親しまれた人形浄瑠璃芝居」の資料の収集・展示と伝統芸能の継承を図っていくものである。そして、後者の人形浄瑠璃芝居関係の資料の全てが中西仁智雄先生の深い愛郷のお気持ちに基づくご寄贈によるものであるところに、大きい特色がある。
 寄贈された資料は、人形の全身、頭、浄瑠璃本、番付、絵画、図書など多彩であり、それぞれ貴重な価値を有するものである。これらの資料を整理し、新しい情報を提供することは資料館の主要な責務であることから、まず、ここに浄瑠璃本の目録を出版することとした。
 ここでは、丸本103冊、床本191冊(内、ひらがな6行本など特色のあるもの24冊)を紹介している。すべて中西仁智雄先生の監修によって詳しい説明がなされており、学問的研究の資料としても有益なものとなって大いに活用されることを期待している。
 なお蛇足ながら付記する。
「丸本」とは、義太夫節の1曲全部の詞章を納めた版本であり、1曲のうち1段を納めた「段物」に対する称である。1頁に7行書かれているのが標準的な形式であるが、8行、9行、10行、11行、12行本も刊行されている。
「床本」とは、太夫が床で義太夫節を語るとき用いる本のことである。大きな文字で5行に書かれているのが普通である。
 惟うに、芸能は人間の情の世界を表現するものであるから、人形浄瑠璃芝居のような伝統芸能を継承することは、われわれ日本人の心情を受け継いでいくことである。その意味で本書が伝統芸能継承の一助たることを願うのである。
 監修者申西仁智雄先生に篤く感謝の意を表して序とする。

平成7年3月
松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館
館長 笹田博之

 



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