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阿波人形の
種類と人形師

   
■人形師■

駒蔵

万芳

利貞

鳴州

卯之助

近蔵

源兵衛

善平

福山佐兵衛

初代巳之助

大江
常右衛門

大江順

原田増太

人形富

二代
面光義光

人形忠
(デコ忠)

人形友

人形泉

来太

天狗久

天狗弁

天狗要
(2世天狗久)

天狗治
(3世天狗久)

2代巳之助

栄吉

3代

巳之助

栄松


  

 

 
阿波人形の種類

 (写真で紹介する頭は、当館の所蔵 資料です。)



● 「角目」=立役方(善玉)●


 立役方(主人公)の目は「角目」と呼んで目尻がとがっている。上まぶたが一直線で、下まぶたを卵を半分に切った形にしている。眉の上下・横目・眠り目・ 口の開閉など、いろいろな動きをする。文楽でいう「文七頭」のことである。
 彩色では、強さを強調するとともに、物の道理をわきまえた聡明さを現したものは白く塗る。これは検非違使のなまった言葉で「剣別師」と呼ばれるものであ る。
 強さを強調する立役方は、丸目と同じく赤く塗ってあり、これも角目の頭という。代表例は、『一谷』の熊谷直実、『玉藻前』の金藤次などである。少し若造 りで口の動く頭は「別師」といい、よく使われている。

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平 成4年3月 31日発行 p.207)




二代面光義作
阿波の十郎衛



天狗久作 若別師頭




●「丸目頭」=敵役方(悪玉)●


 敵役方の目は「丸目」と呼ぱれて目尻が 丸くなっている。これは女形頭も同じ。
 強さをあらわすには、時に顔を赤く塗り、いろいろな仕掛けをつくる。『近江源氏先陣館』の和田兵衛、『奥州安達 原』の宗任などに使う。反対に身分のある敵役は、「時平」のように顔を白く塗り、灰色の勢と限取りをいれる。これを白悪または公卿悪という。


(徳島県郷土文化会館民俗文化財編 集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月31日発行 p.p.206) 




作者不明 和田兵衛




鳴洲作 宗任




●「寄 年(よりと)」=老人●


 男の頭で、老人の場合は「寄年」。表情はやわらかで、少々滑稽味を感じさせるものもある。寄年の中には、役名を頭の名に付けていることもある。平作の 頭、白太夫の頭、合邦の頭などである。

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月 31日発行 p.207)
 




大江順作
合邦(がっぽう)

『摂州合邦ヶ辻』の「合 邦」
 人形頭の名前「合邦」は『摂州合邦ヶ辻』の登場人物の名に由来する。『摂州合邦ヶ辻』は菅専助・若竹笛躬合作、安永2年(1773)大阪で初演で後期人 形浄瑠璃の代表的な作品。上下2巻の話だが、もっぱら下巻切りの「合邦庵室の段」が多く上演される。
 後妻の玉手御前は、世継ぎの俊徳丸に恋をし、許嫁に愛想を尽かせるために俊徳丸に毒薬を飲ませ醜い姿にする。それを知った玉手御前の父、合邦は怒って娘 を刺してしまう。死ぬ間際に玉手は、すべては俊徳丸殺害の陰謀から彼を救うための計略であり、自分の生き血を飲めば俊徳丸も元の姿にもどることを明かす。 全てはお家安泰のためだった、という筋書き。




●「女 形」=女の頭●


 女の頭は女形と呼ぶ。中には目・口の動くものもあるが、本来女形は目が動くくらいで男の頭ほど、深刻な表情はとらない。
 「女形」にも年齢や役により、「小娘」、「娘」、中年女性の「老(ふけ)女形」、老年の「婆」、遊女の「傾城頭」などの区別がある。
 異例なものに、平常は美しい娘の顔でありながら、「山姥(やまんば)」とよぱれる恐ろしい頭がある。急に口が耳まで裂け、金色の歯が光り、目玉がひっく り返って金目となり、髪の中から二本角を出すという凄い頭である。文楽では「がぶ」という。これについては下記の「別頭」を参照のこと

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月 31日発行 p.p.207-208) 




天狗弁作 夕霧(傾城頭)




人形作 お染(娘頭)




● 「ちゃり」=端役の滑稽役●


 端役の頭では、滑稽役にちゃり頭がある。ハンドウとダラスケの2種類に分けられ、ハンドウは主に悪人、ダラスケは善人に使われる。いずれにしても滑稽な 顔でからくりが一つ仕掛けられている。
 からくりは、鼻剥けだったり、返り目(目をむいた表情)だったり、眉下がりだったりする。鼻むけは『仮名手本忠臣蔵』の鷺坂伴内、返り目は『生写朝顔 話』の岩代多喜太、眉下がりは『恋娘昔八丈』の八丈等に使われる。
 端役の頭には鼻や首なども動かぬ雑なものがある。頭と首根は一本の木で造られた猪首式になっている。使い手も一人で「つめ頭」と呼ばれるものである。




ちゃり頭

 どう変わるかな?




ちゃり頭

どう変わるかな?




●別頭  = 一役だけの特別な頭●


 通常の頭とは違う仕掛けがなされた頭。特定の演題の特定の役 だけに用いられるので一役頭ともいう。個性的な特殊な役なので、従来ある頭では流用できず特 別に作られる。




天狗久作 景清


 瞼を開くと真っ赤な目玉が現れる。ちりめんを張り死相を表している。天 狗久の考案である。
 この頭は、若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契編による明和元年(1764)豊竹座初演された人形浄瑠璃『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』日向 嶋の段のみで使用される。
 物語は、平家の残党、悪七兵衛景清と、その娘糸滝の間に交わされる親子の情愛を描く。自ら両眼をえぐって日向に追放になった景清だが、そこへ娘の糸滝が たずねてくる。景清は自らえぐった両眼を押し上げ、娘の顔を見たいと嘆く。まさにこの場面のために作られた頭なのだ。



天狗久作 般若丸

ここをクリックするとあららっ?

 平常は端正な顔でありながら、急に口が耳まで裂け金色の歯が光り(顎落 ち)、目玉がひっくり返って金目となり(返り目)、髪の中から二本角を出す(角出し)という凄い頭。女形の頭にある「がぶ」同様の仕掛けである。
 使用される芸題は、『嫗山姥』(こもちやまんば:近松門左衛門、正徳2<1712>作)山巡りの段でのみ使われる。



   
(C)2003年 〜2009 年、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館
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